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インタビュー

日本式マネジメントでもアジアで通用する

びっくりドンキーをはじめ、丸源ラーメン、ドトールコーヒー、シャトレーゼ、ビアードパパなど、日本国内で多くの飲食店フランチャイズを展開するサンパーク。海外でもシンガポールを中心に、20店舗以上を運営されています。シンガポールの店舗を統括する平間氏に、現地での人材マネジメントについてお話を伺いました。

―これまでのご経歴を教えてください。

私が飲食業界に飛び込んだのは20歳の時で、「和食なら海外でも働ける」という発想で和食の修行を始めました。その後、日本国内のホテルやドイツ、上海など海外での飲食業の経験を経て、サンパーク社へ入社。日本でしばらく勤務した後、豚骨火山ラーメンのマネージャーとしてシンガポールに来て4年目となります。赴任当初は豚骨火山ラーメン2店舗のみを管轄していましたが、シャトレーゼのフランチャイジーとしてシンガポールに展開し始めてからは管理店舗数が急激に増え、現在は店舗運営からマネジメント業務へシフトしました。

豚骨火山ラーメンは現在6店舗(FC含む)、シャトレーゼはスコッツ伊勢丹店を皮切りに今では10店舗を管理しています。他にも、新業態のコットンキャンディーを1店舗、ベルヴィルというパンケーキのお店をブギスにオープンしたばかりです。

日本と海外で調理人として厳しい環境の中で修行させて頂いた経験が、現地での人材マネジメントに役立っていると感じます。

―店舗スタッフへの教育はどのようにされていますか?

シンガポールの店舗スタッフは現在、全業態合わせて130人程度おり、その7〜8割がシンガポール人ですが、基本的には日本と変わらない教育を行っています。入社後は各店舗での業務を始める前にオリエンテーションを実施します。そこでは当社の3つの経営理念、10個の行動指針のほか、お客様に対するアプローチ方法や作業フロー、社内ルール、食中毒予防の注意点など会社方針をしっかりと伝え、すべての判断をそれらに基づいて行動するように指導しています。

スタッフにはまず会社の考え方を理解してもらわないと、どんな指導も伝わらないと考えています。なので理念や行動指針を一緒に唱和したり、勤務態度の良し悪しの判断をそれらに紐づけて説明するようにして、徹底的に刷り込みます。店長に対しても同様です。そうすることで、全員が同じ認識のもとで、会社方針に沿ったオペレーションや教育ができるようになります。

―日々の業務の中ではどのような点を工夫されているのでしょうか。

スタッフの勤務態度で気になる点があれば注意するようにしています。ただ一番大事にしているのは、上に立つ人間が自ら体現して見せ続けることです。時には、私やエリアマネージャーも現場に入って、現場スタッフたちに見せています。

また「聞く」ことを続けています。納得がいかないこと、店長には言いづらいことなどは、私やエリアマネージャーが店舗を回って、スタッフの声を直接聞くようにしています。従業員と管理側との間にグレーゾーンはあまり作らないようにして、相互理解、信頼関係の構築を進めています。

店長によっても実力差はあるので、キャリアアップが望めそうなスタッフは実力のある店長の下に配置し、会社方針をしっかりと植え付けていきます。そうして成長したスタッフを別の店舗に移して、店舗内の教育役にしていくことで浸透を進めるという取り組みもしています。

―日本式の教育に納得がいかない従業員もいるのではないでしょうか?

確かに厳しく言うこともあるので、「辞めたい」と言い出すスタッフもいます。その場合は、店長、エリアマネージャー、私が話を聞くようにしています。彼らと腹を割って話して、彼らの家族のことなども聞いていくと、歩み寄るポイントが見えてきてそのまま続けてくれるスタッフもいます。

とは言っても、特別扱いをすることはありません。他のスタッフからの不平不満も出ますし、人数も多いので管理しきれないですから。本人が嫌々働いていたらサービスの質にも、一緒に働いているスタッフのモチベーションにも影響するため、どうしても方針が合わないスタッフは辞めても仕方ないと考えています。辞めたスタッフの中には、他の現場を2、3か月経験した後で戻ってくるスタッフもいるので、私たちのやり方が現地に合わないという訳ではないと感じています。

―日本でのマネジメントと異なる点はありますか。

日本のマネジメントの仕方を現地でそのまま適用しているため、当初はうまくいかないこともありましたが、それでも私たちのやり方を貫いてきました。管理する店舗数が増えれば増えるほど管理職のマンパワーだけではマネジメントしきれなくなるので、スタッフへの教育をしっかりしなければいけないと考えたからです。

結果的には、日本と大差ないと感じています。シンガポール独特のポイントとしては指導方法に注意が必要なくらいです。日本は、いい意味でも悪い意味でも、役職がある人から何か言われればきちんと従うことが多いですが、シンガポール人は役職よりもその人のスキルや行動を見ています。営業だったら営業でのパフォーマンスを見せて、店舗であれば模範になるようなサービススキルを見せないと、従ってくれないのです。なので先ほどもお話した通り、上に立つ人間が体現して見せることを大切にしています。そこを抑えておけばだいたい指導には従ってくれますね。

そのため、上に立つ人間はスキルが高く真面目で、一貫性があることが大事だと強く感じます。しっかりスタッフの管理ができている店長はスタッフとよく話をしています。当社の考え方を落とし込んで、それに共感して働いてもらえれば、すごく良いチームが作れます。日本でもシンガポールでも当社のスタンダードを崩さずにいけば、人は集まってくれると信じています。

―そのほかに重要視しているポイントを聞かせください。

私自身が一貫性を保ってブレないことで、信頼関係を築いていくことを心がけています。

大切なことはメールやチャットで済ませるのではなく、その場に行って本人と直接話をするようにしています。ツールを使えば簡単ですが、5分でも10分でも「自分のために時間を作って話をしてくれる」「大事にされている」とスタッフに実感してもらうためです。

足を運ぶことで熱量を伝えたい。そして彼らの言い分も聞き、会社の言い分も伝えて、歩み寄りをする姿勢を持ちながら多少柔軟に対応をしていくことで、一緒に働く「仲間」になっていけると思っています。そのためにも、誰もが意見を言いやすいような雰囲気づくりを心掛けています。

―続いては、業務のシステム化について教えてください。御社では弊社の勤怠管理システム “KING OF TIME” とクラウド給与管理システムをご利用いただいています。どのようなことがきっかけで導入に至ったのでしょうか。

私がシンガポールに赴任した当初の勤怠管理と給与計算の作業は大変なものでした。
各店舗のタイムカードで打刻したデータを、各店長が月末に手入力でExcelに転記し、オフィスに提出。各店舗から集まったデータをオフィス側で再び給与計算システムに入力し直す、という方法で行っていました。各店長や、オフィス側にとって無駄に手間がかかってしまうだけでなく、従業員の勤務時間を店長が簡単に不正操作できるリスクもありました。

シンガポールの店舗数が増え始め、このまま手作業で管理していては立ちいかなくなると感じ、改善する方法を模索する中で “KING OF TIME” を知り、導入に至りました。これはクラウド勤怠管理システムなので、各店舗の勤怠データを店長の手間をかけずにオフィス側で集約できます。特に弊社の場合、勤務時間を15分単位でカウントするため、タイムカードの数字も15分単位に手直しする必要があり、手間と時間がかかることから、各店長の大きな負担にもなっていました。その自動化にも対応いただけたので大変助かりました。

また、 “KING OF TIME” と連携しているクラウド給与システムも利用しています。各店舗で打刻された勤怠データをそのまま給与計算にリンクできるため、手間が省けるだけでなく、人為的ミスや不正操作のリスクも減らすことができました。

これをきっかけに、皆勤手当の制度を作りました。 “KING OF TIME” で1か月間シフトを休まなかったスタッフを把握し、給与に決まった金額を加算するようにしています。これを始めたことで、急な欠勤はだいぶ減りました。

―今後の展開をお聞かせください。

店舗運営という面では、シンガポールとタイで計画しているパンケーキ1号店を成功させて、2、3店舗目を広げていきたいと考えています。人材面では、日本から人を呼んでマネジメントをしてもらうのではなく、ローカルの店長をキャリアアップさせて、より上位のマネジメント職を任せていきたいと考えています。ローカル人材が管理する体制にしていかないと会社としても発展しないですし、彼らのキャリアアップも実現できる組織にしたいですね。スキルがある人材をどう育成し、どう引き上げていくかが、今後の課題です。