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インタビュー

飲食業で大きくするんやったら重要なのはシステム化 誰でもできる形に落とし込まなあかん

しゃかりき432“と言えば、タイで最多店舗を展開する日系居酒屋です。2012年の進出から、今では6ブランド40店舗を展開し、従業員は600名超。撤退も多い飲食店の海外展開の中で、ここまで展開できた秘訣を清水社長に聞きました。

ーしゃかりき432”といえば、タイで最も有名な日系飲食店だと思います。タイ進出から、ここまで拡大されるまでの経緯を教えて頂けますか?

元々は日本で居酒屋を経営していて、10年間で6店舗まで拡大したけど、正直国内マーケットの頭打ちを感じるようになってきたんですよ。そんな折にタイに来るきっかけがあって、タイ人と大阪人の明るさが似ているところで可能性を感じましたね。

後は国としての成長の勢いかな。当時のタイは良くも悪くも未完成の部分が多かったからこそ可能性を強く感じたんやと思います。この前ロサンゼルスとメキシコと視察してきたけど、やっぱりアメリカみたいな、既に整っている場所には興味が沸かへん。メキシコはこれからって感じでええとこやったね。自分の性分として、単純にそういう場所が好きなんやと思います。

可能性を感じたら、あとはもう見切り発車。2011年に市場調査に来て、2012年には日本側6店舗中4店舗を売却したお金をもって移住。その4か月後には1店舗目をオープンしてました。それからも、とにかく走り続けなあかん思って、ふと気づいたらここまでの店舗数になってました。

ー店舗をここまで急速に増やしている日系飲食店は、世界中探しても珍しいと思います。なぜここまで早い急成長を遂げることができたのでしょうか?

一番は俺自身が自分でタイに来て経営したことやと思います。経営はスピードが一番重要、これは間違いないと思います。お客さんからの要望やクレームに対して、どれだけ早く改善できるか、どれだけ現場で情報が集められるか、拡大していく中でお店を任せられるメンバーと信頼関係を作っていくか、そういうことを自らで、出来るかどうか。

大手の日系飲食店もいっぱい出てるけど、やっぱり社長が自らその国で指揮を執れんかったら、なかなか難しいと思います。

ータイではまだまだ飲食店の進出チャンスがあるのでしょうか?

いや、正直うちの進出時と比べるとバンコク市内での競争はかなり厳しくなってきてるんちゃうんかと思います。日本のブランドというだけでは売れなくなってきてる。しゃかりきグループ自体も、一部の店舗では売上が伸び悩み始めてます。

進出してきた2012年はまだタイ人が経営している“なんちゃって“日本食が多かったんですよ。だから”本物“を持ってくれば勝てる自信はありました。けど今やと「剣心」とか、タイ人が経営するブランドでも十分なクオリティーの日本食が増えてます。

さらに言えば、タイにいる日本人のお財布事情の影響もあるんじゃないですかね。駐在員も若い世代が増えたり、現地採用の日本人が増えたり、接待費が減ったりと、自由に使えるお金が前よりも減ってるように感じますね。これからは、本当の意味での差別化が重要になっていくんでしょうね。

ー日本人10名、タイ人が100名、タイ近隣国(ミャンマー、カンボジア、ラオス、フィリピン)約500名を現在雇用されているということですが、マネジメントは難しくなかったのでしょうか?

進出時から3店舗目くらいまでは、自分自身で現場に出て指導してましたね。初期からの古株が今の幹部としてグループ全体を引っ張ってくれてます。

初期から日本人、タイ人、ミャンマー人など多国籍なメンバーがいたけど、国籍に関わらず接してきたつもりですね。一人一人の名前を覚えて声をかけるのは大切にしてます。今はさすがに多すぎるので入ったばかりの従業員までは、まだ覚えられてへんけど、毎月、各店から提出がある給料査定は、今でも必ず目を通してます。

あとは日本人のおもてなしの文化も徹底して教えましたね。「ご飯連れて行ってもらったり、来店してもらったり、給料もらったり、何かしてもらった後は必ずお礼のメッセージも送るんやで」って教えていたら、今では毎月給料日の直後は、個人のライン宛に大量のメッセージが届くようになりました(笑)

タイ人はミャンマー人を見下す人もいるから、最初はギクシャクした部分もあったけど、そこは自分が間に入ることで徐々になくなって、お互いが協力し合う社内文化にできたかなと思います。国籍に関わらず平等に扱うという意識はしましたね。

この国でのマネジメントは「ふわっと感」が大事やね。日本人同士だと、100%徹底して突き詰めてしまうけど、それではあかんと思います。タイ人やミャンマー人に対しては7~8割。少しだけ言い訳の余地や、自由を残しておくようなイメージ。そうすると、上手に付き合っていける気がします。

福利厚生の面も、日本では一度失敗していたから、タイでは早い段階で整備しましたね。そうすると退職する人材も減りました。ボーナス、昇給、保険など、全体的に分厚目にしてるし、年1回の社員旅行、飲み会なんかも必ず参加して全力でスタッフが楽しめるようにしてます。

日本で経営していた時に一番苦労したのが、スタッフに関してのことやったからね。今考えれば、順調に拡大していて調子に乗っていて、システムを整えてこなかった結果やと思います。だから、福利厚生含め、社内の体制をシステム化することには注力しましたね。

ー具体的にどのようなシステム化をされたのでしょうか?

福利厚生以外の話で言えば、キッチンのマニュアル化。日本人が経営する日本食だからこそ、料理のクオリティーを高く保つことが大切やと思います。キッチンでの調理フローなどを動画アプリでマニュアル化しました。動画である程度学んだあと、さらに現場でも研修をさせます。

動画にこだわった理由は言語の問題でしたね。しゃかりきグループは多国籍で中には読み書きも出来ないスタッフもいるし、もともと文字を読んで理解していくという文化は日本ほど強くはないですし。従業員たちが難なくマニュアルを覚えられるように動画でマニュアルを作り、一気に配信するシステムにしました。

他にも、各店舗の売上レポートが本部に集計できる仕組み化もしました。今ではそのレポートを参考に、数か月単位でメニュー改善を行ってます。タイ人は飽きやすい。飽きさせないためにもメニュー変更は頻繁にする必要があるんです。

勤務時間を計測するタイムカードもズルするやつがいて大変でしたね。ほかの従業員からクレームが上がってくるんですよ。従業員たちが不満を持たずに仕事に集中できるよう、人事管理の部分もシステム化を進めています。

ーしゃかりきでは、弊社の勤怠管理システム “KING OF TIME” をご利用いただいています。導入前の状況など、導入に至った経緯を教えてください。

導入前にタイムカードを使っていた時の問題は「集計が大変だったこと」と「不正打刻があったこと」。
従業員ごとの勤務時間や残業時間、遅刻時間の集計にかなり時間がかかっていました。元々、各店舗で従業員が自分のタイムカードを集計してマネージャーに報告。マネージャーが数字を確認しながらシステムに手入力し、本部でも手入力された数字を再確認するという手間をかけていました。

スタッフ同士の助け合い代理打刻なども発生して不正が多かった。実際どのくらい頻繁に起きていたかは分からんけど、他のスタッフからクレームが上がることはありました。タイ人やミャンマー人は気質的に、従業員同士で注意しあうということは難しいから、不満を貯めてしまう前に、会社の制度として不正できない形にしたかったですね。

指紋認証システムを導入したことで、本人しか打刻できないので、間違いなく不正な打刻はなくなりました。体感としては、従業員の時間に対する意識も変わった気がしますね。今までテキトーに自分の出退勤を行っていた従業員たちが、しっかり自分たちで管理するようになったんちゃうかなと思います。

KING OF TIME の前に他の指紋認証のシステムをトライアルしてたんやけど、元々使っていた日本の給与計算システムと連携できないという問題があったんですよ。KING OF TIME ならそれが可能なので導入することにしました。

ー最後に、今後のしゃかりきがどのように展開していくのか教えてください。

バンコクにおいて競争が激しくなってると話しましたけど、今後も守りに入っていくつもりはないですね。タイの不動産会社とジョイントベンチャーの話を進めていて、彼らと共に更なる拡大を進めていく予定です。

売上が伸び悩む既存店舗があっても、素早く見切りをつけて次の店舗にリソースを回していく予定です。最近ではバンコク市内から離れた、日本人がほとんどいない郊外への出店を増やしています。

郊外へ出店すると、やっぱりタイ人のお客さんたちが喜んでくれるし、市場としてのやりやすさもある。個人的にも、もっと未完成なエリアで挑戦を続けたいという思いもあるかな。大阪の味をバンコク市内だけでなく、もっと広めていきたいですね。

一方で、独立の応援もしてやりたいと思ってます。最近も、初期メンバーの日本人を、のれん分けという形で独立させたり、古株のタイ人スタッフが日本食の食堂をオープンしたりしてますね。

若い間に挑戦したいという想いは、応援してやりたい、独立の時は支援したいと思ってます。それで成功すればそれはそれでいいし、失敗すればしゃかりきに戻ってくればいい。初期メンバーのおかげでここまで大きくなってこれたと思うし、感謝している。だから恩返ししたいですね。